鞄とバッグの違いは、シンプルに言いますと日本語か英語かという違いですが、業界内では内容量や構造、縫製方法で呼び名が分かれます。
一般社団法人日本鞄協会の説明では、『かばん』は、オランダ語のkabas(カバス)や中国語でふみばさみ(文挟)、挟板、夾板(キャバン)の名前が訛ったという説があり、日本語として鞄(かばん)と呼ばれるようになったと言われています。
『鞄』は、革へんに包むという、材料と用途の意味を表したわかりやすい漢字ですね。
ラゲージ、鞄、バッグなど大きさや収納量の違いの認識
業界内では、鞄は旅行用のサイズで比較的大きい大容量のものになると、「バッグ」というより「ラゲージ」と呼んでいました。
それに対して男性用の書類が入るくらいのしっかりした芯のあるものは『鞄』と呼ばれ、男性用でも比較的カジュアルな小振りの物、硬い芯が入っていないものは「バッグ」と呼んでいました。
厳密な規定は無く、会社によってもすこし違うようです。
バッグの中でも、色々なタイプが有ります。構造の特徴で考えてみましょう。
レディースの物はほとんど「バッグ」と呼ばれています。その中でも、「ハンドバッグ」「カジュアルバッグ」「袋物」というカテゴリーに棲み分けが有りました。
エコバッグみたいな柔らかくて、平ミシンでも縫えるような、複雑ではない縫製のものは「袋物」や「ショッピングバッグ」などと呼ばれます。
それに対して「ハンドバッグ」と呼ばれるものは、エレガントなイメージで金具がついたり、芯が入ったりしてかっちりした形をしています。『エルメスのケリーバッグ』などがハンドバッグの代表的な型です。襠(マチ)の形状によっては上下送りの腕ミシン等で縫っています。持ち手が短めの、肘の内側に掛けたり手で握ったりするものが多く、持ち手が少し長めのソフトなハンドバッグは、90年代にトレンドバッグとして人気のあった『フェンディのバゲット』のように小脇に抱えるように肩にかけられます。2wayタイプのショルダー紐がついているものもあります。
「カジュアルバッグ」はトートバッグ、リュック、ショルダーバッグなど大振りで普段使いの物を指すことが多いです。 コットンやナイロン等の布帛製など、様々な素材を使いますが、皮革製も革附属の物もあります。
帆布、キャンバスを使用したバッグは、カジュアルバッグのカテゴリーに入ります。布へんに包と書いて布製のカバンを意味する、一澤信三郎帆布さんのロゴマークは、なんで今まで誰も言い出さなかったのだろうと思うほどの、説得力のある漢字ですね!正しい意味で構成されています。 帆布を使用したバッグやかばんの企画製造販売をされている京都の有名な会社ですが、そもそもの漢字の成り立ちはこうでなくちゃ!と思いました。
職人さんも、ハンドバッグを縫う方と袋物を縫う方、皮革専門、布帛専門、両方OKな方、いろいろ得意分野に分かれておられるので、私もOEMのお仕事を依頼するときは、縫製方法によってお願いする職人さんを決めています。
ハンドバッグのカテゴリーに入るバッグのイメージイラスト。↓
昔から和装業界で『袋物』と呼ばれる和装用バッグは特別。正絹素材で繊細なデザインで細かく丁寧に縫われている高級袋物があります。これは、エコバッグなどの「袋物」とは区別しています。
それらは区別して京袋物と呼ばれる事もあります。着物に合うもので、貼り合わせて作った名刺入れや、生地を洋封筒の形状に縫い合わせた数寄屋袋というセカンドバッグ的な物、懐紙入れ、あずま袋、お茶席に持って行く横長で上品な持ち手の短いハンドバッグ等です。
舞妓さんの持つ籠巾着も、京袋物のひとつで、底部分は竹の網代で出来ています。
お茶席用は、正絹の帯地などで作ったあおり型のポケット付きの横長タイプです。「利休バッグ」という愛称で着物通の方々に好まれています。あの茶道の始祖、千利休さんから頂いた名前ですが、恒久的なスーパーインフルエンサーでいらっしゃいますね!横長のバランスが着物姿をすっきり見せてくれます。
それらの和小物的なバッグは、京都だけの特別なものではなく、全国的に昔ながらの工法で作られていて、それぞれ素敵な和装バッグが有りますよ。